今日は、OMソーラー埼玉会議があったので、その記事を書こうかと思っていたのですが・・・。
沢山のリアクションに、宮本常一さんの授業話を書かなくてはいけないという脅迫感に。
今日は、夏休みと冬休みの課題について、書いてみます。
夏休みには、実家に帰ったり地方に旅する学生も多いので、聞き取り調査のレポート課題が出される。自分達と境遇も年齢も違う人を相手に、心を開いていただき思い出していただきながら正確に聞き取る訓練。これがなかなか大変。また、終戦記念日がある季節だけに、戦争を知らない子供たちに、戦争体験を伝承させようという意図もあったのだろう。とても難しい、でも大切な課題が出された。授業では、為政者の意に反して、飄々と生きる民衆のしたたかさが伝えられた。
【課題】
新聞の記事で、日本は優勢に戦っているかのように伝えられていたが、ほとんどの民衆は
玉音放送で日本の敗戦を知ったわけではないだろうと思う。必ず、事前に日本の敗戦を感づいていたはずです。では、何時、どんな出来事から「日本は負けるんじゃないかな?」と思ったのか聞き取ってください。
むむむ・・・、なんじゃこりゃ!私の両親じゃ若すぎてわからないし・・・こんなん困った。見ず知らずの人に、こんな話聞けるほど度胸も信頼もないしなぁ・・・。
困った時は、彼女に相談・・・そしたら母親が応じてくれるということになった。
それにしても、一度封じ込めて忘れようとした話、なかなか口が重たい。すんなりとは話が進まない。当時の状況や周辺の話題から徐々に絞り込んでいく。こちらがあせると必ず話は反らされる。丁寧に丁寧に、全てを受け入れながら聴いていくうちに、ポツリポツリ当時の記憶が言葉になってきた。
「6月ごろだったかしら・・・塩が配給になって・・・。いろいろなものが既に配給だったけど・・・欲しがりません勝つまではということで・・・。新聞では、どこで何機落としたとか撃沈したとか勇ましいことが報道されていたけど・・・日に日に配給も厳しくなり、とうとう塩まで・・・という感じでした。だって、塩って生命を繋ぐ源でしょ、砂糖とはわけが違います。とうとうこの国は国民の生命も守れなくなったのかと思った瞬間、この戦争はだめだと・・・・・・。」
顔見知りの、彼女の母親ですらこんなだから、初めて会った人から、心の奥にしまった事柄を引き出してしまう宮本常一さんの偉大さを知った。懐の深さを知った。宮本先生は、霊のようにすぅーっと自然に相手の心に重なり合い、入り込み、一体化する。一緒に笑って一緒に泣いて、話した人も長年背負ってきた大きな荷物を降ろしたように、ほっとしている。副産物ですが、このこと以来、彼女の母親が急速に私に好感を持ってくれた気がします。
冬休みは、年末年始、お正月がある。家族と過ごす時間も長くなるし、各地方独特の行事が繰り広げられる時期。日本中何処にでもあり、地域の文化が色濃く現れている物・・・それは雑煮。
【課題】
田舎に帰って、自分の家の雑煮をスケッチしなさい。そのとき、餅の形は丸か四角か、茹でているか焼いているか、汁の出汁は何から採っているか、味付けは醤油か味噌かお澄ましか、飾り付けには何が入っているか・・・・・・。
僕は神奈川県だけど母親の出身は山陰。餅は四角で茹でて入っている。出汁は鳥と鰹節のお澄まし。飾りつけはほうれん草と金糸たまご銀糸たまご、紅白蒲鉾と鶏肉、焼き海苔。
それぞれ地方色が出ていて面白い。文化が何処でどう継承され途切れるか、事実を丁寧に繋ぎ合わせると、見えてくる生活。正月行事は地方色を色濃く残し、結婚と言うことで文化が混じり変態を遂げていく。こんなことから、文化の交流人の流れをつかんでいく。
現在この調査をしたら、成立するだろうか?正月に雑煮を食べる習慣すら危ないかもしれない。御当地ラーメンがブームになるように、自分達の生活に縁もゆかりも無い地方の雑煮を食べる人もいるのではないだろうか。雑誌やテレビで紹介された雑煮が美味しそうだから、それをつくって食べる人はいないだろうか?行ったことも無い土地の料理をネット通販で取り寄せて食べられる時代。人が歩いて顔をあわせ、文化を共有しながら伝えられた習慣。最近は、ネットで地球の裏側からの情報でも、顔も背景も知らない方からの情報でも何でも取れてしまう。定点カメラでバーチャルにその街を覗き込み、あたかも住民になってしまう。民衆の生活の痕跡から点と点が繋がり線になっていき、文化の流れをつかむ宮本民俗学。点はあくまでも個人の趣味の範囲で、点の大きさは変われど一向に繋がらない、あるいは、地域を越えてネットで繋がる時代。例えば「わきたさん」とは何日か前に「遺留品研究所」と言うキーワードで繋がった関係。他に何の文化も共有していない関係。地縁も人縁も無い。今和次郎さんや宮本常一さんのような活動が成立するのだろうか?
こんな面白くも大変な宿題が出されました。
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