木造で家を建てるとき、多くの人を悩ませるのが集成材の柱。
日本での歴史もあまり無いので、その耐久性に?なのだ。
単純な疑問として、接着剤で板を貼り合わせて、いつか剥がれてしまうのではないかという心配。
雑誌や新聞には時々集成材の剥離の問題が出ている。現時点で100%剥離が起きないもjのは無いそうだ。業者に聞くと、無垢材の背割れに比べたら、剥離なんて全く問題ないとの答え。
無垢材は高いので、集成材でしょうがないかと考えている方が沢山いるが、それは大きな間違え。
集成材より安い無垢国産材も沢山あるけど、私はお勧めできない。南傾斜の温暖な山ですくすく短期間で育てられた材木は、強度が出ない。きちんとした乾燥がされていない無垢材は、割れたり狂ったりする。こんなことが、まかり通って日本の山は信頼を失ってきた。
私が集成材、特にその主流のホワイトウッド集成材を使わないのには、わけがある。
集成材は、辺材を貼り合せてつくられることが多いが、この辺材(木の表面に近い白太の部分)は、シロアリの被害を受けやすいのだ。建て替えが決まったヤマトシロアリが住み着く家(埼玉県)の床下に、建築用材として使われることが多い、ホワイトウッド集成材・杉・檜・米ヒバ・米栂の輪切りと板を床束に止めて、180日のシロアリ食害実験をした。下の写真がその結果だ。
いかがでしょう。他の材に比べて、ホワイトウッドの集成材は極端に食害を受けています。その次に食害を受けているのは米栂ですが、集成材に比べると雲泥の差がある。この米栂は、シロアリに弱い材として、最近はあまり使われなくなった材だ。それに比べてもこんなに差がある。
それはそんなに驚かなかった(想定の範囲内)が、私を驚かせたのは、シロアリに強いとされている檜や米ヒバも僅かではあるが、食害を受けていたという事実。勿論杉も同じだ。但しこれは、どれも辺材に限られていた。もう少し分かりやすく言うと、養分があり柔らかな白太は樹種に係らず食害を受けるが、硬くて不味い芯材(赤身部分)は食べられていないのだ。
防蟻剤がなかった時代に、日本の木造文化の先人達は、「芯持ち材」を使うことでシロアリ被害から逃れていた。私も子供の頃「柱には芯持ち材を使え」と父から言われていた。
安易に薬剤に頼ることなく、まず先人の知恵を調べることは「東京町家」の基本姿勢。
もう少し写真をアップにして、ホワイトウッドの集成材と杉の芯持ち材の食害を比較してみよう。
シロアリは接着剤は健康に良くないので食べない。(笑)年輪の硬いところも出来れば食べたくない。だからこんな食べ方をする。接着剤の間を食べ進むので、間の一枚食べられてしまうと柱はバラバラになり強度を保てなくなってしまうという、致命的なダメージを受ける。板は、すっかり繊維がボロボロで、手で簡単に千切れる状態になっていた。この間僅か6ヶ月・・・。
杉板も、左上部の白太部分には縦にシロアリが食べた後が見受けられる。しかしその量は僅かで、赤身には及んでいない。よしんば白太部分が全て食べられても、芯持ち材なら致命的なダメージは受けない。
家づくりのプロである大工職人(組立て大工は除く)に聞くと、ほとんどの人が集成材に対して否定的な意見を持っている。それどころか、ハウスメーカーに勤める人たちの中にも、自分の家には集成材を使わない方が沢山いる。彼らに聞くと、普段の仕事でも集成材を使いたくて使っているわけではないという。コスト的には無垢の方が安く出来るとも言う。
では何故、集成材がこんなに日本の住宅市場に席捲してしまったのだろう。それは、住まい手の自然の木に対する理解不足が原因なのだ。温度や湿度で割れる・狂うといった現象が、即クレームに繋がるので、そういった問題が起き難い集成材をハウスメーカーは求めるのだ。最近では、地域工務店にも集成材が浸透し始めている。
東京町家では、紀州の山から産直で良材を仕入れてきている。健康な山の管理下で、50~60年かけてじっくり育った年輪が詰まった良材を、特殊な乾燥をかけて含水率を20%以下まで落とした杉材。柱の強度を現す曲げヤング係数もE=70以上の物だけを選別して使っている。柱は、全量検査をして、そのスペックは直に柱に印刷される。東京町家の家は上棟の時に、1本1本の柱の強度を確認できる。乾燥がしっかりしているので、OMソーラーの家に使ってもほとんど狂いが来ない。集成材と同じ値段というわけには行かないが、中間マージンを省いて非常にリーズナブルな価格で入れている。30坪の家1軒分の材木費の差額で、食器戸棚1本分程度しかないのだ。
但し、何が何でも無垢が良いと言うことではない。
例えば、柱のスパンが大きい場合、品質的に安定した強度が期待できる、集成梁や鉄骨梁を使うこともある。一定のスパンを超えると無垢梁は自分の重さに耐えられなくなるからだ。
どんな材料でも、そのメリットを最大限に活かし、そのデメリットを補って使うことが必要です。だから、シロアリに弱い集成材を使うときは、セントリコンシステムでシロアリ監視をきちんとすれば、そのデメリットは解消し、品質的に安定しているメリットが際立ってくる。
防蟻処理を間違えると、家族に健康被害が及びます。特に集成材の場合、シロアリの食害が短期に進行しますので、充分に気をつける必要があります。
安全な防蟻方法については、ここをクリック願います。
下の写真は、ホワイトウッド集成材の柱の原寸です。