26・27日に見学会を行う「布田の家」の階段。
シンプルに軽快にまとめられていて、気持ちが良い階段になった。
しかし、この階段には、快適に住み続けられる為の工夫が施されている。
西洋では、階段のファーストステップをとても大切に扱う。つまり、上に昇って行きたいという気にさせるデザインが大切と言うわけ。気持ちよく昇れない階段はとても疲れる。反面、一段毎に視線の高さが変わる階段は、建築家としては空間的に一番の見せ所だ。
この階段、ファーストステップにちょっと角度をつけて、昇る人を迎に行っている。こんな気遣いが、昇りたくなる階段をつくる。中村好文さんと仕事をしたとき、階段のファーストステップで方向性を付ける事が、空間を広く快適にするために必要だと教わった。
この階段を降りてきたとき、1段目に角度を付けていなかったら、そのままガラス戸に激突する方向に力が働くし、視界的にも戸が迫り余裕が無い。段板に角度を付ける事で、視線の方向が切り替わり、圧迫感が解消される。視線が抜ける方向を向いて降りつくという事。その場合、ただ単純にササラに段板をぶつけると、納まりが悪い。よって、手前で寸法を落とすと自然に納まる。ここがデザイン力!
上部の留め方も神経を使いたい。この場合、2階の幅木の止め方、ササラと壁との距離(施工可能な最低寸法)、ササラ上部の切り落とし方、ササラと上り框の取り合い、手摺の納まり、どれも慎重にデザインしたい。ここがおざなりになると、階段の雰囲気全てがぶち壊しになる。
これは写真で見てもダメ!
見学会で、自分の体で昇り降りして、感じ取らなくては何の意味も無い。
見学会は、五感をしっかり働かせて、実体験する場と考えている。
例えば同じ寸法の階段をつくっても、その場の雰囲気が違えば、昇り易さも違ってくるものだ。
i-works の標準階段とは違った、トライアル階段になっている。ここで得られた成果は、今後のi-works で、展開されていく。これが、オートクチュールとプレタポルテの関係。実験的な試みから生まれた「すてき」を、馴染ませ標準化していく。この作業がi-works に命を与え、活きたシステムにしていく。